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畠山美由紀 曲コメント 1-4
01.その町の名前は

作詞:おおはた雄一  作曲:畠山美由紀  編曲:中島ノブユキ

 念願だった、おおはた雄一くんとの共作・共演が実現した曲です。おおはたくんに先に歌詞を書いていただいてから曲を作りました。お願いしたテーマは故郷の家族や友人達への「また会いに行くよ、いつも心に思っているよ」という気持ち。実は、同じテーマで自分で作っていた曲があったのですが、それはどうしても先に進みませんでした。
ところが、おおはた君が書いてきてくれた詩を見た瞬間、全く新しいメロディがこの詩に導かれて頭に微かに浮かんできたのです。まったくもって おおはた君には素晴らしいインスピレーションをいただきました。とても自然に楽しく作曲できました。
 そしてこの曲のアレンジは長年の友人であり、憧れの音楽家である中島ノブユキさんにお願いしました。和声の専門家でもある中島さんには素朴な原曲に深みと色彩感を与えていただきました。映画のサントラのようなイントロから始まるこのテイクは、なんとサウンドチェックをしながらのファースト・テイクです。自らを音楽の僕と称して憚らない中島さんのジャッジによって、奇跡的に録れた音の魔法を正しく残すことができました。
 おおはたくんには、「美由紀さんがこの歌詞がすごく好きで歌っていることが伝わります。学校の唱歌集に入るような名曲誕生だなぁ」と言ってもらえたのがとても嬉しかったです。そしてまたドラムの栗原務くん、クラリネットの黒川紗恵子さんに一緒に演奏してもらえたこの組み合わせにも胸が踊りました。    
 余談ですが、以前ジェシー・ハリスと一緒に作った私のアルバムを聴いて、おおはたくんはご自身のアルバムプロデュースをジェシーにお願いしたのだそうです。嬉しいなあ!ジェシーにも、ぜひこのアルバムを聴いてもらいたいですね。


02.風の吹くまま

作詞:畠山美由紀  作曲:栗原務  編曲:栗原務

 ダブル・フェイマスの時から約20年来の友人、栗原務くんにシンプルで、アップテンポで、ロックで、メロディアスな疾走感があるポジティブな感じの曲を書いて欲しいとお願いしました。(欲張りだな) そして期待以上の曲を書いていただきました。
 以前、アメリカのドキュメンタリー番組で、ある虐待された犬の話の番組を観ました。本当に見るのも辛い番組でしたが、たくさんの人々の献身的な助けによって酷く悲しい過去の記憶を断絶し、キラキラと輝く朝の光を浴びながら嬉しそうに散歩するそのワンコの姿を見て涙が止まりませんでした。
ナレーターは言いました。「彼は過去から解放されたのです。これから歩くすべての道は、彼にとって祝福された新しい道です。もう、つらいことは終わったのです。」確か、そんな感じだったと思います。私の心も救われました。幸せそうなワンコの笑顔。新しい日を生きる喜び。その感動を歌詞にしたいと思いました。
 栗原くんのこの曲のイメージもまた、震災があり、津波に遭い、けれども海を愛し、漁船に乗って明日に向かって風を切っていく被災地の人々の誇らしい姿や大切な事を教えてくれた人々に対する感謝の気持ち等々、ということでした。
 そして仕上がったマスタリング後のこの曲を聴いて彼が一言、「聴いていて楽しい」。繰り返されるギターのシンプルなコードは、希望の曼荼羅のよう、ざらっとしたとっても良い質感です。ピアノの音色は朝日の輝きのようです。ドラムのビートは洗練された力強さで、まさに風をきって進む船のイメージ。
 私は、プリテンダーズのクリッシー・ハインドが日本語で歌っているようなイメージで歌いました。希望の願いを込めて。新しい日を生きよう、風の吹くまま、心のままに。



03.What A Wonderful World

作詞/作曲:George David Weiss, George Douglass 編曲:島裕介


 トランぺッター・島裕介くんにアレンジをお願いしてレコーディングしました。昨年から今年にかけてジャズセッションでご一緒した最強なバンドの面々、ドラム・吉岡くん、ピアノ・ジェイコブ、ベース・高道さんと、そしてこの誰でも知っている超スタンダードの「What A Wonderful World」をを特別なものにするために小池龍平くんに歌をデュエットしていただきました。龍平くんとは、震災後、福島のライブでこの曲を一緒に歌いましたね。
 まだ10代、映画学校に通っていた頃、当時校長だった今は亡き今村昌平監督の考えで私たち生徒は田植えの経験をさせてもらうために福島の農家にお世話になりました。あの時の、あの圧倒的な福島の緑の美しさ、今思い出せば、私「What A Wonderful World」を、もちろんルイ・アームストロングのものを、熱心に聴いたのはあの時、あの福島でした。ああ、そうでした。激しい黒人人種差別の時代にもこの世の美しさを、この世の喜びを歌ったこの歌が、その喜びと悲しみがこんなにも今実感として胸に響くなんて。演奏してくれたミュージシャンみんなの魂がこもったこのテイク、    ぜひ、聴いて下さい。

04. Moon River

作詞:Johnny Mercer  作曲:Henry Mancini  編曲:小池龍平


 映画「ティファニーで朝食を」の主題歌としてあまりに有名ですが、私は原作者のトルーマン・カポーティの大ファン。主人公のホリー・ゴライトリーはカポーティ自身を色濃く投影しているといわれています。自由奔放で無垢な魂、しかし生まれながらの冒険者は繊細で孤独な魂の持ち主でもあります。
 実生活では破滅していったカポーティ、しかし小説のなかのホリーは生き延びて虹の終わりを見つけたかのように思えます。実はホリー役にはカポーティは、オードリー・ヘップバーンではなくマリリン・モンローを切望していたのだそう。カポーティの「文章によるポートレート」という作品のひとつにマリリンのことを描いた『美しいこども』という傑作があります。マリリンもカポーティも恵まれない幼少期を過ごし、その傷は一生消えなかった。私の勝手なムーンリバーのイメージは、彼らふたりが心安らかに月夜に輝くムーンリバーを渡って行くイメージ。この世にはまだまだ知らない世界がたくさんある、そう夢見ながらそれぞれの人生を生きたふたりの後ろ姿が、すーっと消えて行くイメージ。死はしかし、夜の七色の虹につつまれて決して忌まわしいものではない、というイメージ。そんな願い。
 今回のこの素晴らしい、アナログ感あふれる質感で録音してくれたエンジニアの中村くん、本当にありがとう。とても気に入っています。大好きです。一緒に演奏して歌ってくれたのは前の曲に引続き、小池龍平くんです。素敵な声、暖かいギター、何百回でも聴けそうです(笑) いや、実際、聴いてる。どんどん深く広がっていくギターのアレンジ、すごく引き込まれます。

by wagakokyo | 2011-11-13 23:25 | 畠山美由紀 曲コメント 1-4
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