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畠山美由紀 曲コメント 5-6
05.わが美しき故郷よ -朗読-

詩:畠山美由紀  

06.わが美しき故郷よ

作詞/作曲:畠山美由紀  編曲:笹子重治


 3月11日、私はライブリハーサルのため、下北沢のスタジオにいました。あの時は、世の中がまさかこんなことになるとは夢にも思っていませんでした。
 数日後、停電で真っ暗闇の部屋の中でろうそくの火を灯しながらギターを手にしてこの曲を作りました。地元の家族や友人知人たちと連絡がつかない不安な日々でしたが、そのとき音楽家として今曲を作らなくては、もうこの先自分は音楽を頼りに生きていけないというような気がしました。うまく説明できませんが。
 テレビに写る自分のよく知っている風景たちが、あんなにも無惨に痛めつけられ消滅してしまった様子を見てあんまりだと思いました。非常に、非常に、痛ましく、ああいったかたちで自分がいかに故郷の人々を、そしてあの美しい東北の地を愛しているかを痛感するという事態に心がちぎれる思いでした。
 ぽろぽろと浮かんできたメロディとともに故郷のあの風景も浮かんできました。あんなに恐ろしい海なのに、まず海の景色が浮かんできました。津波を目の当たりにした故郷の人々には申しわけないと思いました。恐ろしさを体験していないから書けるのだ、と思い故郷のみんなと断絶されてしまったようにも思いました。ただ、私が知っているあの美しい故郷には海の景色が不可欠なのです。
 かつてフランスの作家マルセル・プルーストが名著「失われた時を求めて」で試みた言葉による過去の再生の執拗な願いを、憚りながら私も強く抱きました。天才をひきあいにだして図々しいかぎりですが、私も私なりに音楽と言葉で、精一杯の故郷への讃歌というものを作りたかった。歌のなかに立ち昇ってくるかつての美しい故郷の有り様を未来につなげたかった。
 そして、それからすぐに雑誌「SWITCH」の編集の友人から「今の気持ちを誌面に自由に使って表現して下さい」との依頼があり、そのタイミングは何かの啓示のようでした。散文詩「わが美しき故郷よ」はそうして書き下ろしたものを掲載させてもらいました。
 参加していただいたミュージシャンの方々には、私の願いを叶えてもらいました。歌う度に、私の美しい故郷が目の前に広がるようです。聴いて下さるすべての方々の故郷が幸せでありますように、と願わずにはおれません。

by wagakokyo | 2011-11-13 22:57 | 畠山美由紀 曲コメント 5-6
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